食品コスメ部

食品・醸造及びコスメティック業界の技術支援を通じて、佐賀県におけるものづくり産業や、地域資源を利用した産業を推進します。

地域産業の身近な技術パートナーとして、課題解決や新たな価値創造の一助となることを目指しています。

ご相談ごとやお困りごとがありましたらお気軽にお問い合わせください。



ー最近の研究成果ー

食品コスメ部による最近の研究成果を紹介します。

現在取り組んでいる研究については、こちらをご参照ください。

「研究について詳しく知りたい」「研究成果を活用して商品開発したい」などのご要望は、ページ最下部の問い合わせ先から、お気軽にご相談ください。

1.佐賀県オリジナル清酒酵母「佐賀はがくれ酵母」の育種開発

清酒の製造においては、酵母とアルコールが香味成分をつくるといわれており、酵母の特徴は清酒の品質に直結します。蔵元から「製造効率が良い清酒酵母が欲しい」「佐賀でしかできない商品が造りたい」などの要望が寄せられたため、製造効率がアップするF401泡なし株や、メロン様の香りが特徴のSAWA-1株、県イチゴ品種「さがほのか」から単離され、爽やかな酸味が特徴のSGH株、パイナップルの香味が特徴のStyP株等を開発してきました。

これらの酵母は、県産の特定名称酒を中心に幅広く使用されており、その使用率は全国トップクラスです。令和4年には、県産酒のブランド化推進や知的財産の保護の観点から、「佐賀はがくれ酵母」の商標を登録しています。



本研究成果は令和6年2月に開催された第22回SAGAラボ10+G*で報告されました。

SAGAラボ10+G報告資料はこちら (589KB; PDFファイル)


*佐賀県では、技術開発に注力していることを県民の皆様に知っていただくとともに、試験研究機関の研究成果の情報発信力を高めるために、研究成果の発表と意見交換の場として「SAGAラボ10+G」を開催しています。ラボ10は「佐賀県内の10の試験研究機関(ラボラトリー)」を、Gは「ガバナー(知事)」を意味しており、知事と試験研究機関の職員が一同に会したオープンな成果報告と意見交換の場です。

SAGAラボ10+G*紹介ページ

関連する研究報告書(抜粋)

新“佐賀酵母”の育種とその醸造適性評価(第4報)-佐賀酵母F401株を親株とするカプロン酸エチル高生産酵母の育種選抜-(6896KB; PDFファイル)

新”佐賀酵母”の育種とその醸造適性評価(第5報) ー薬剤耐性を付与した1倍体酵母の取得及びそれらを用いた交雑育種株の醸造特性評価ー (4726KB; PDFファイル)

新”佐賀酵母”の育種とその醸造適性評価(第6報) ー交雑育種株の実地における醸造特性評価ー (437KB; PDFファイル)

成果普及事例

佐賀はがくれ酵母で醸した佐賀オリジナル清酒

2.紫外線暴露による表皮ダメージを再現した皮膚光老化システムの構築

皮膚老化の最大の外的要因は紫外線(UV)であり、皮膚細胞へのUV暴露により誘導される炎症等が、シミ・シワの形成を引き起こすといわれています。UVによる表皮のダメージを予防する化粧品向け天然素材の開発が盛んですが、化粧品の開発においては世界的に動物実験が禁じられており、生体の反応を忠実に再現した"生体外皮膚モデル"の導入が必要不可欠です。

センターでは、中波長紫外線(UVB)を照射したヒト三次元培養表皮の経皮水分蒸散量(TEWL)の測定系を導入することにより、UVBが引き起こす表皮ダメージを定量的に評価する皮膚光老化システムを構築しました。このシステムでは、UVB暴露によりモデル表皮内のセラミド合成関連遺伝子やタイトジャンクション形成関連遺伝子が変動し、TEWL上昇に反映されています。また、光老化防止効果が立証されているアスコルビン酸誘導体の添加により、TEWL上昇が濃度依存的に抑制され、アスコルビン酸誘導体による表皮ダメージの抑制作用が正しく評価されています。

天然由来成分のスキンケア作用の探索や、皮膚の光老化に関する基盤的研究等における皮膚光老化システムの活用が期待されます。



この研究成果を日本動物細胞工学会2022年度大会(JAACT2022)で発表しました。

JAACT2022発表資料はこちら (867KB; PDFファイル)

関連する研究報告書(抜粋)

 化粧品の機能性を評価するための生体外皮膚モデルの構築及び高機能素材の探索(第1報)(851KB; PDFファイル)

化粧品の機能性を評価するための生体外皮膚モデルの構築および高機能素材の探索(第2報)(8326KB; PDFファイル)

3.コスメ素材としての玄界灘産海藻類の有効利用

佐賀県は玄界灘に面しており、海藻を餌とするウニやアワビなどの好漁場です。玄界灘には約100種の海藻が生息するといわれ、沿岸域の豊かな水産資源を支えています。これらの海藻のうち、食用とされているのはワカメやヒジキなどごく一部で、その多くは未利用資源です。県では、北西部の唐津・玄海町を中心に美と健康に関するコスメティック産業を集積させ、化粧品に展開できる自然由来原料の供給地となることを目指しています。そこで、玄界灘の海藻資源から機能性を有するものを選抜しコスメ原料として実用化すべく、皮膚に対する機能性を評価しました。その結果、約60種類の海藻のうち、ノコギリモクやウミウチワなどのいくつかの未利用褐藻類に、皮膚の抗老化作用や抗炎症作用があることを見出しました。これらの結果は、玄界灘の未利用海藻が佐賀県発のコスメ原料として活用できることを示唆しています。


ウミウチワ


この研究成果は令和元年12月に開催された第11回SAGAラボ10+Gで報告されました。

SAGAラボ10+G報告資料はこちら (1328KB; PDFファイル)

関連する研究報告書

藻類の産業利用に関する可能性研究(第1報)-機能性を有する佐賀県産海藻資源の選抜-(4278KB; PDFファイル)

藻類の産業利用に関する可能性研究(第2報)-機能性を有する佐賀県産海藻資源の選抜-(2,206KB; PDFファイル)

4.アスパラガスのアレルギー抑制効果

日本では、現在2人に1人が鼻粘膜や目の充血などのアレルギー症状による悩みを抱えているといわれています。アレルギー症状の予防・緩和が期待でき、かつ日常生活に取り入れやすい食品の需要が高まっています。そこで、アレルギー症状抑制作用を有する食品素材を探索したところ、佐賀県の特産品であるアスパラガスが強いアレルギー抑制効果を示すことを、モデルマウスを用いた試験により明らかにしました。アスパラガス由来のアレルギー抑制成分の特定を試みた結果、糖脂質及びリン脂質が有効成分であることを突き止めました。さらに、アスパラガスの選果時に大量に出る未利用部にも同様の効果があることを見い出しています。これらの研究成果は、未利用アスパラガスを活用した新商品の開発に貢献しています。


アスパラガス アレルギー抑制


この研究成果は令和4年3月に開催された第18回SAGAラボ10+Gで報告されました。

SAGAラボ10+G報告資料はこちら (918KB; PDFファイル)

関連する研究報告書(抜粋)

佐賀県産アスパラガスの新産業活用を目指した機能性素材開発(第1報) (801KB; PDFファイル)

佐賀県産アスパラガスの新産業活用を目指した機能性素材開発(第2報) (1015KB; PDFファイル)

佐賀県産アスパラガスの新産業活用を目指した機能性素材開発(第3報) (10217KB; PDFファイル)

学術論文

Iwamoto A. et al. Inhibitory effects of green asparagus extract, especially phospholipids, on allergic responses in vitro and in vivo. Journal of Agricultural Food Chemistry. 68, 5199-15207 (2020).

成果普及事例

アスパラガスパウダーの開発

5.レンコンポリフェノールの抗炎症作用

佐賀県はレンコンの一大産地ですが、形が悪いなどの理由で商品価値が低いレンコンは、規格外品として一般には流通されていませんでした。センターのこれまでの研究により、レンコン由来ポリフェノール(プロアントシアニジン)が強い抗酸化性を有し、肥満モデルマウスの脂肪肝を改善する効果があることを明らかにしています。レンコンポリフェノールは皮膚の炎症やシワ形成等の原因となる炎症性マーカーの産生を抑えることを、3次元培養表皮を用いた研究に明らかにしました。紫外線や加齢による皮膚のダメージを抑える機能性素材としてのレンコンポリフェノールの活用が期待されます。


関連する研究報告書

地域資源を活用した機能性食品および素材開発(第3報)-皮膚機能に及ぼすレンコンポリフェノールの影響-

学術論文

Iwamoto A. et al. Lotus root extract inhibits skin damage through suppression of collagenase production in vitro. Cytotechnology. 74, 309-317 (2022).

Tsuruta Y. et al. Effects of lotus root (edible rhizome of Nelumbo nucifera) on the development of nonalcoholic fatty liver disease in obese diabetic db/db mice. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry. 76(3), 62-466 (2012).

Tsuruta Y. et al. Polyphenolic extract of lotus root (edible rhizome of Nelumbo nucifera) alleviates hepatics teatosis in obese diabetic db/db mice. Lipids in Health and Disease. 10:202 (2011).

成果普及事例

未利用レンコンを原料とした加工食品の開発

ー成果の普及・技術支援事例ー

研究成果を基に実用化に至った事例や、当センターとの連携、支援による商品化事例を紹介します。

研究成果の普及 (1)  ー佐賀はがくれ酵母で醸した佐賀オリジナル清酒ー

これまでに開発したSGH株やSAWA-1株の1倍体交雑育種(特性のある酵母同士をかけあわせる技術)により、新たな香味を有する多様な佐賀はがくれ酵母が誕生しました。例えば、StyP株はパイナップルの香りが特徴的で宗政酒造株式会社により「焱杜(えんと)」として商品化されています。また、カプロン酸エチル高生産酵母は青りんご用の爽やかな香りを生成し、有限会社馬場酒造場により「Bloom」として商品化されています。

※佐賀県は、県産酒のブランド化推進や知的財産の保護の観点から、センターが育種開発した清酒酵母を「佐賀はがくれ酵母」として商標登録しました。

※佐賀はがくれ酵母等の微生物資源は、センターの規定に基づき分譲します。また、その使用場所は佐賀県内の事業所に限ります。詳しくは、下記お問い合わせ先にご相談ください。





  左:焱杜(宗政酒造株式会社

  右:Bloom(有限会社馬場酒造場

  佐賀県産酒は佐賀県酒造組合でも紹介しています




 

研究成果の普及 (2)  ー未利用・低利用レンコンを原料とした加工食品の開発ー

佐賀県はレンコンの一大産地ですが、形が悪いなどの理由で商品価値が低いものは、規格外品として一般には流通されていませんでした。センターの研究により、レンコン由来ポリフェノール(プロアントシアニジン)が強い抗酸化性を有し、肥満モデルマウスの脂肪肝を改善する効果があることを明らかにしました。また、レンコンポリフェノールは、形が悪いと言われる下位節、皮および節などの低利用な部位により多く含まれています。

これらの成果を基に、未利用・低利用なレンコンを原料としてレンコンパウダーやレンコン茶など多数の商品が誕生しています。


レンコン加工品の紹介

レンコンパウダー(マルハ園芸黒木農園アサヒ・アグリ佐賀

レンコンチップス(マルハ園芸)  etc.

関連論文

Tsuruta Y. et al. Effects of lotus root (edible rhizome of Nelumbo nucifera) on the development of nonalcoholic fatty liver disease in obese diabetic db/db mice. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry. 76(3), 62-466 (2012).

Tsuruta Y. et al. Polyphenolic extract of lotus root (edible rhizome of Nelumbo nucifera) alleviates hepatics teatosis in obese diabetic db/db mice. Lipids in Health and Disease. 10:202 (2011).

研究成果の普及 (3)  ーアスパラガスパウダーの開発ー

アスパラガスの選果時に切り揃えられた根元部分(切り下)は、未利用部位として有効活用が模索されていました。社会福祉法人肥前茗荷会(ひぜんみょうがかい)では、センターの支援により、未利用部位を原料とした「アスパラガスパウダー」を開発しました。アスパラガスパウダーは、原料の乾燥と粉砕を同時に行う先進的な技術で製造され、GABA、ルチンなどの機能性成分を多く含んでいます。水やお湯に溶いたり、料理に混ぜたりすることで、アスパラガスの有効成分を美味しく摂取することができます。

アスパラガスパウダー 肥前茗荷会


技術支援事例 (1) ー卵の薄皮の加水分解物が農作物の成長を促進/卵殻膜肥料の開発ー

卵の殻の内側についている卵の薄皮(卵殻膜)は繊維状タンパク質を主成分とし、そのままでは水にほとんど溶けません。卵殻膜を加水分解し、水溶化する新技術をENEGGO株式会社との共同により確立し、卵殻膜加水分解物を液体肥料の原料として活用しました。卵殻膜入り液体肥料はアミノ酸やペプチドを多く含み、植物の成長を促進させるばかりでなく病気にもなりにくいという特徴があります。



本技術を含む未利用卵殻のアップサイクル技術の開発や市場展開の取組が、ものづくり日本大賞九州経済産業局長賞を受賞しました。

受賞内容のポスターはこちら (1071KB; PDFファイル)


技術支援事例 (2)  ー清酒王国「佐賀」から赤酢の発信/佐賀県赤酢プロジェクトの支援ー

「赤酢」は江戸前握り寿司の流行とともに生まれた日本独自の調味料で、 清酒粕を熟成、発酵させ、さらに長期間寝かせて作る静置発酵法で作られます。時間と手間がかかる赤酢はほとんど作られなくなってしまいましたが、佐賀県赤酢プロジェクトにより、佐賀の酒蔵の清酒粕を原料にした赤酢が現代に蘇りました。伝統的な静置発酵法で作られた赤酢は、一般の醸造酢に比べ酸味がまろやかで香り高いのが特徴です。センターの分析により、黒酢と比較して、味や生理機能に関わるアミノ酸類が多く含まれることがわかりました。また、味覚認識装置による分析においても、一般的な醸造酢と比較して酸味が穏やかで旨味や甘味が強い結果を示しています。


ー主な設備機器ー

主な設備機器は以下のとおりです。詳細は設備機器利用のページをご覧ください。

設備機器利用のページ

食品加工機器

・粉砕機

・スチームコンベクションオーブン

・熱風乾燥機

・造粒装置

・スプレードライヤー

・真空凍結乾燥機   他

コスメ機能評価装置

・肌特性測定装置

・顔皮膚画像解析システム

・三次元皮膚画像解析システム

・超音波真皮画像装置

・微小循環マッピング装置   他

食品・コスメ分析装置

・イオントラップ型高速液体クロマトグラフ質量分析システム(LC-MS)

・ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS)

・アミノ酸分析システム

・糖質分析システム

・ラピッドビスコアナライザー   他

ー技術セミナー・展示会支援ー

技術セミナーや展示会出展支援事業を開催しています。開催の際には、センターホームページ及びメールマガジン(技術情報メール配信サービス)にてお知らせします。

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これらの事業は、技術ワークショップ事業「食品・コスメ研究会」の一環として実施しています。

技術セミナー

専門の講師を招き、食品やコスメ分野に関する注目の技術や知見についてわかりやすく解説します。また、実際の装置等を用いた実演を行います。


化粧品開発支援セミナー「成功・失敗事例から学ぶ機能性化粧品原料のR&D」開催風景


展示会への出展支援

令和6年度には、西日本食品産業創造展に「佐賀県工業技術センター」として出展しました。ブース内では成長が期待される県内事業者(1日あたり2社、計6社)も出展し、事業者が販売している製品のPRや販路開拓を支援しました。


西日本食品産業創造展 出展支援 Bakery Full Circle 北村醤油 大串製菓 アナログキムチ グレイスファーム 木漏れ陽

このページに関するお問い合わせ

食品コスメ部 TEL:0952-30-8162 E-mail:food_rds-sec@pref.saga.lg.jp

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